【遠い空の向こうに】 監督 ジョー・ジョンストン 出演 ジェイク･ギレンホール クリス･クーパー クリス･オーウェン ローラ･ダーン 音楽 マーク･アイシャム ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 1999年度作品 \3,800(購入時価格)

原題は「OCTOBER SKY」、10月の空。 映画は1957年の10月、ソ連が人類初の人工衛星スプートニク打ち上げ成功を告げるニュースから始まります。「スプートニクショック」と呼ばれるこの事件に影響を受けたのは片田舎の炭坑町にすむ少年ホーマー。夜空に輝くスプートニクを見上げて感動したホーマーは、学校一の変わり者クエンティンと、不良仲間のロイ、オデルの3人を巻き込み、本格的なロケットを作り始めます。 しかし、炭坑夫であり現場監督の父親と対立。さらに思わぬ事件や困難が少年達に降りかかり、挫折を味わいます。 それでも彼らは担任の教師や、町の人々に支えられ自作ロケットの発射に成功。そして…。 いわゆる「スタンド・バイ・ミー」に代表される少年の成長を描いたヒューマニズム映画。どこか、釈然としない物が残る「スタンド・バイ・ミー」に比べてこちらはハッピーエンド。しかもこれがNASAで活躍していた元ロケット技師が書いた実話というから驚きです。 主役のギレンホールはそう、「デイ・アフター・トゥモロー」で主役の一人だったサムくん。以前にもこういう父と息子の関係を描いた感動映画に出ていたわけで、こういう役が似合うのですねぇ。 ポイントはなんと言っても“失敗を繰り返しながら、自分の夢を一生懸命に追いかける少年たちの成長する姿”。これに尽きます。落ち込んでいたり、努力することに感動したい方は是非。 画質はまずまず優秀。解像度よりは色の乗り、しっとりとした艶やかさで魅せる画です。音質は優秀、場の雰囲気、ロケットの上昇速度や炭坑の閉鎖感を印象深く描写します。マーク・アイシャムが添える情緒豊かな音楽も二重丸。 現在（2005年）はトールサイズケースで販売されいます。

		No.001でご紹介した『猫の地球儀』と同じ作者さんの作品です。以前と同じSFファンタジーに分類されますが、学園ラブコメの要素もあります。 　ただし、この作品の一番の魅力は一夏のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。作品のタイトル、表紙を飾っている女の子、伊里野可奈（いりやかな）と浅羽直之（あさばなおゆき）の出逢いと一夏の淡い恋物語です。 　舞台は空想の日本。北の敵国からの空襲に怯える町、園原（そのはら）が舞台です。 　新聞部の取材で夏休み中、ずっと学校の裏山に数日こもっていた浅羽は、水浴びをしようと学校のプールへやってきます。ところが先客の居ないはずのプールに女の子が居ました。学校の生徒では無いらしい女の子を浅羽は不思議に思いつつ、その子に泳ぎを教え楽しい一時を過ごします。 　夏休み明けにその子が自分のクラスへ転校してきた事で、平和だった学校生活が一変。喧噪に満ちた毎日を過ごす事になります。 　登場人物たちは、新世紀エヴァンゲリオンのキャラクターに似た設定が多いですが、それだけで終わらないのが秋山流。前作にもまして突っ慳貪（つっけんどん）と言うか、殴り書きにも似たごり押しの文章が綴られます。僕はこの表現方法が好きで、なんとか盗んでみようと同じ作家さんを追いかけているのですが、いつの間にかその術中にはまってしまったようで。すっかりお気に入りの作家さんです。 　ちなみにこの作品に登場する一部を自作“殺 -AYAME-”に使ってたり。 　ぢつはこの作品、早ければ2005年の初めにはアニメ化が予定されているとか。今（2004年10月24日現在）が旬の作品といえるかも。
【イリヤの空、UFOの夏 その1】 秋山瑞人著 電撃文庫 2001/11/20発行 \577

		お話の舞台は遙か未来の、静止衛星軌道上に浮かぶコロニー。そこをねぐらにしている進化した猫たちが主人公です。 　電波ヒゲというチョウチンアンコウのチョウチンのような器官を持ち、電波で猫同士が会話するのです。 　そして常にパートナーとなるロボットを引き連れ、猫たちには困難な力仕事を代行させて生活しています。前述の電波ヒゲはロボットを操るためのリモコンとしても機能します。 　設定だけでもかなりぶっ飛んでいますが、それ以上に猫たちのキャラクターがあまりに個性的（名前が全て漢字一文字でカッコイイ）で、人間以上に人間くさく、ついつい感情移入してしまいます。 　僕のお気に入りは幽（かすか）という猫ですが、この巻では最後の方にちょこっとしか出てきません。（表紙の黒猫は幽です） 　この巻では、焔（ほむら）という猫が活躍します。彼はスパイラルダイバーという格闘家のような人生（猫生）を送っていました。ある日、コロニーで最強の称号を得ていた焔は、ひょんな事から謎の猫と戦う事になります。自分が最強と信じていた焔はその謎の猫に手も足も出せず完敗。謎の猫は幽と名乗り、姿を消します。焔が幽を追いかけていくとそこには…。 　自分の生き様を真っ直ぐに貫く猫たちの姿勢は、欲望にフラフラしてしまう自分を見直す切っ掛けにもなりました。 　現実をそのまま切り取ったような、リアルな文章表現がさらにそれを魅力に引き立てていて、この辺の手法は是非とも盗みたいところ。
【猫の地球儀 焔の章】 秋山瑞人著 電撃文庫 2000/01/25発行 \535